WAIS-3
WAIS-3はADHDを含めた発達障害の診断に使われる知能検査です。
WAIS-3の内容
WAIS-3では次のような内容の検査を行います。大きく言語性検査と動作性検査に分かれます。
言語性検査
知識量や常識能力、言葉の取り扱いを検査します。耳から受け取った情報を言葉で応答する聴覚的な情報処理能力を検査します。VIQ(言語性知能指数)という指標で表されます。
詳細項目としては次のようなものがあります。
知識
一般的な事柄に関する知識に答えます。この項目により、一般的な知識な量を把握できます。(例:電話の発明者はだれですか?)
理解
日常的な問題の解決や社会ルールなどについて答えます。実践的知識を表現する力、過去の経験を利用する力を把握できます。
算数
算数問題を暗算で制限時間内に答えます。計算力や集中力、量的推理の能力を把握できます。
類似
2つの言葉の似ているところを答えます。論理的、抽象的な思考能力を把握できます。(例:りんごと梨はどのようなところが似ていますか?)
単語
単語の意味を答えます。言語発達水準、語彙力、一般的学習能力を把握できます。
数唱
聞いた数字を順番通り、または逆の順番で答えます。聴覚からの短期記憶能力を把握できます。
語音整列
数字とかなの組み合わせを聞き、数字を小さなものから順番に、また、かなを五十音順に答えます。注意力、五十音や数字の順序の発達能力を把握できます。
動作性検査
効率よく作業を進める力、先を読む力を検査します。目からの情報を受け取って動作で応答する視覚的な情報処理能力を検査します。PIQ(動作性知能指数)という指標で表されます。
詳細項目としては次のようなものがあります。
絵画完成
絵が描かれたカードを見て、その中に欠けている重要な部分を指で示すか言葉で答えます。この検査により、視覚的な刺激に対して素早く反応する力や、視覚的長期記憶能力、重要な部分とそうでない部分を見分ける能力を把握できます。
符号
簡単な記号を見て書き映します。事務処理の早さや正確さ、視覚的な短期記憶能力を把握できます。
積木模様
積木模様を見て、同じ模様を作ります。全体を部分へ分解する力、非言語的概念の形成能力、空間認知能力を把握できます。
行列推理
選択肢の中から空欄にあてはまる絵を選択します。抽象的思考、問題解決能力、類推的推理、時間制限を伴わない非言語的問題解決能力を把握できます。
絵画配列
絵が描かれたカードを、物語が完成するように制限時間内に並び替えます。結果の予測能力、時間概念の理解力、論理的思考能力を把握できます。
記号探し
記号グループに見本と同じ記号があるかをできるだけ早く答えます。視覚認知能力やそのスピード、視覚的探査の早さを把握できます。
組み合わせ
ピースを組み合わせて形を完成させます。部分間の関係性、思考の柔軟性を把握できます。
WAIS-3で得られる結果指標
- 全検査知能指数(FIQ)。
- 言語性知能指数(VIQ)…知識量や常識能力、言葉の取り扱う能力、聴覚的な情報処理能力を表す。
- 動作性知能指数(PIQ)…効率よく物事を進める能力、先読み能力、視覚的な情報処理能力を表す。
知能指数と知能水準の対応
知能指数と知能水準の対応は次のとおりです。
- 130以上…非常に高い
- 129-120…高い
- 119-110…平均の上
- 109−90…平均
- 89−80…平均の下
- 79−70…境界域
- 69以下…知的障害(精神発達遅滞)
群指数
- 言語理解(VC)…言語理解能力。知識を実生活に活かすことのできる能力。
- 知覚統合(PO)…得た情報を様々な角度から分析してまとめる能力。
- 注意記憶(WM)…ワーキングメモリー。脳の中の記憶領域。小さいと同時作業ができにくい。特にADHDの参考となる指標。
- 処理速度(PS)…作業スピード。
【体験談】WAIS-3の検査でADHDが判明
WAIS-3の検査でADHDと診断された方の体験談を紹介します。
私は30代半ばの男性です。子供の頃から忘れ物が多く、片付けもできませんでした。順序良く事を運べず、人の話もよく聞かなかったりしていました。こういったいわゆるADHDの症状は子供の頃からあったと思います。でも、子供だからと親もそれほど心配せず、医師に相談などはしていなかったそうです。
ところが、大人になると職場の人間関係で悩むことが多くなりました。仕事もギリギリまで終わらなかったり、会議でも集中できなかったりしていました。
このままではずっと仕事で悩むと思い、発達障害支援センターに相談し、大人の発達障害を診てもらえる病院を紹介してもらい、私はその病院に受診にいきました。そこで問診が行われ、私は今までの症状を話しました。
そのあと、日を改めてWAIS-3という知能検査を受けました。検査者の質問に答えていく形式だったので、幾分か楽しんで受けたと記憶しています。
結果は全検査知能指数(FIQ)が120で知能水準としては高いというものでした。しかし、言語性知能指数(VIQ)が130であるのに対し、動作性知能指数(PIQ)が100とその差が30もあるのが問題であると医師から伝えられました。これはつまり、言ったりするだけで実行はできないというものでした。これは思考と行動のバランスが悪いADHDな大人の典型的なパターンのひとつだといわれました。
その後、何回か問診を重ね、医師からADHDだと診断されました。その時私はホッとしたのを覚えています。何か病名がつくことで安心しましたし、病気であればきっと治療法もあるだろうと思ったからです。今は、ADHDの薬で症状を抑えつつ、治療を前向きに続けています。